現代の環境対策、エコ効率の弊害 『サステイナブルなものづくり』第2章
【まとめ】
◆現在の産業は「エコ効率」を追求している
◆廃棄物への対応は「レスバッド(less bad)」方式
根本的なシステム、デザインは変えずに問題を起こすものを減らす。
例)4Rなど
【エコ効率の限界】
現代において、効率化は最優先されるものです。
産業革命から続く価値観として、自然を都合よくコントロールできることは素晴らしいこと。
そうして産業を発展させることが社会にとって良いことだった。
生態系の多様性や健康は二の次で、産業発展が最優先で進んできました。
効率を求めた結果、現在栽培されているトウモロコシのほとんどは栽培用に交配された品種が流通しています。
雑草を取り除くため、農薬も使われている場合がほとんどです。
雑草も刈らなければ、侵食や洪水を防ぎ、土壌を安定させ、再生してくれます。さらに生き物の棲み処となり、害虫を退治してくれる生き物も出てきます。
本来は農業に利益をもたらしてくれる一面もありますが、効率性、利潤を優先して、農薬が使われてきました。
そして効率化による産業発展が進む中、レイチェル・カーソンの『沈黙の春』を出版。化学薬品、特にDDTなど農薬が自然にどれだけ悪影響を与えるかを明かし、初めて公害や有毒廃棄物に注目があつまります。
ここで成長から持続への転換をテーマに議論が起こるようになります(1992年のリオ地球サミットなど)。
その議論の中で出てきたのが、エコ効率。資源を効率的に利用し、廃棄と公害を削減することという概念です。
エコ効率を実践するために、よく「4R」が行われています。
4Rとは、削減(Reduce)、再利用(Reuse)、リサイクル(Recycle)、規制(Regulate)を指し、ざっくりと以下に説明です。
◎削減(Reduse): 製品をつくる時に使う資源の量を少なくすることや廃棄物の発生を少なくすること
◎リサイクル(Recycle): 廃棄物等を原材料やエネルギー源として有効利用すること
◎再利用(Reuse): 使用済製品やその部品等を繰り返し使用すること
◎規制(Regulate): 製造物の廃棄物や排水などに規制をかけること。
ただ、ブラウン氏いわく、4Rは「レスバッド(less bad)」の対応であり、
根本的な産業のシステム、デザインは変えずに問題を起こすものを減らすだけものとしています。
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◆削減(Reduse):
量を減らすだけでは焼き石に水。少量の廃棄物でも影響は確実に出てきます。
そもそも有害物質を使わないことがベスト。
◆再利用(Reuse):
廃棄物を別の場所に移動させただけ
リサイクル紙製のトイレットペーパーを使えば、それに含まれているダイオキシンを下水として流すこともあり得ます。
◆リサイクル(Recycle):
いまのリサイクルは「ダウンサイクル」
リサイクルされるときに種類の違うプラスチックと混合され、合成プラスチックになり、質は低くなります。
リサイクルするようにデザインされてないので、無理やりリサイクルしようとすると、さらに化学物質が加えられることも多いため、材料の価値低下につながります。
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「レスバッド(less bad)」の考え方では、企業と環境保護団体の対立を生みます。
このようなエコ効率に取り組むことは、企業にとってコストがかかるだけだから。
また、法による廃棄物への規制が、むしろ廃棄物の問題解決を妨げることもあります。
そもそも問題の根本である産業デザインは変わっていないにもかかわらず、規制を下回る量であれば廃棄物を出しても全く問題ないということになるからです。
規制さえ守っていれば、ほかに何も取り組まなくていいということになりがちです。
エコ効率は既存の産業システムが与える影響を緩和させるだけ。
トウモロコシの例に戻りますが、たしかに最低限の時間、労力、費用によって最大の収穫を得るためには、品種改良や農薬を利用することは有効です。
いまの人口を支えるために、効率的に農作物を大量生産することは必須。
いますぐに、すべての農業が無農薬、自然種の苗を使うように変われば、収穫量はとてもじゃないが足りないでしょう。
効率性はとても役立つものだが、そればかり追い求めてもダメ。
現状を維持するためとはいえ、人・自然の健康に悪影響を与える方法で農業を続けても大丈夫というわけではありません。
僕も現状打破の方法は全くわかりませんが、いまのやり方をシフトしていくべきだと思います。
マクダナー氏は全く違う産業デザインを、生態系からヒントを得て提唱しています。
これまでとはまったく違うモデルを見ていきましょう。
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